ケロちゃん大王(後編)

 やっと、梅雨が開けた爽やかな朝、今日は休日なので
診療所に備え付けの、手漕ぎボートで湖上散歩に出かけることにした。

 湖の西岸沿いにゆっくり北上すると、穏やかな山風が吹きだした。
船底を流れる水の音がコロコロと心地良よくこころに響く。そんな
気持ちの良い気分に浸っていると、フッと何か白く光る線がボートに
引っかかたのを感じた。

 「こぉおら~~~!!、釣り糸をボートに引っ掛けるな!!!」

 といきなり怒鳴られた。
 
 見るとボートの舳先に釣り糸が引っ掛かってしまっている。
慌ててボートを戻し、釣り糸をはなした。

 「どうも、すみません~~!!」

 頭をかきながら、岸の方へ目をやると、見かけた顔が・・・・、

 ケロちゃん大王だ。
 向こうも私に気がついた。

 「お~~、先生やないけぇ~っ!?」

 あまり歓迎すべき再会ではない、でも、その後の様子も気がかりなので
あの張り出したお腹の具合を聞いてみた。
どうやら、あれから私の言いつけを守り、酒を絶ち、お湯と魚と
少しずつ食事をしているとのこと、それで、確かにお腹は少し凹み
息苦しさも楽になったとのこと、

 あの時のギロッと睨んだ目はやや穏やかになり、むしろ優しい
目付きに変わっている。

 それでも、下痢が続きなかなかおさまらないらしい。
体が余分な水を出そうと努力しているのだろう、しかし、このまま
下痢が続くのは体にとっては辛い状況だ。

 そこで、ブルーグリーンに属する処方のうち肝硬変と下痢に効く
柴苓湯を10日分処方することにした。代金はいただけそうにもないので
彼の今日の収穫の一部、魚を一匹もらって帰ることとした。

 ボートで帰ろうとしたとき、ケロちゃん大王は私を呼び止めて
彼の生い立ちやら、身の上話をし始めた。彼は両親を早く亡くし
里親に厳しく、辛く育てられたがそりが合わず家を飛び出し
天涯孤独だという。一度は結婚もしたが、白黒はっきりさせないと
気が済まない正確に妻がついてゆけず離婚になったこと、仕事も
その性格が災いして、どこでも喧嘩になってしまい、酒浸りの日々となり
今のような姿になりはてた、とのことだった。

 ケロちゃん大王と子供たちに呼ばれていた、奇妙奇天烈な彼だが
なるほど、そんな事情があったのだ・・・。

 梅雨明けの気分転換のつもりで出かけたが
 思わぬ魚一匹の収穫で、今日の湖上散歩は終わった。
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by nijiirosinryoujyo | 2011-05-25 21:27 | 色彩診断  

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